ヘッドホンアンプを自作する


 すっかりヘッドホンアンプに慣れてしまったせいか、外に出るときのiPhoneのヘッドホン出力も良くしたいと思うようになりました。Dr.DACは一応電池駆動できますが持ち運ぶには大きく、電池の持ちがあまりよくありません(オペアンプにもよりますが、せいぜい2時間くらい)。そして、ヘッドホンアンプをいろいろ調べていると、自作するという記事に数多く出会います。大出力がいらないので比較的単純な回路で組めてしまうらしい。そんなところから、やってみようかな・・・と思ったのです。

 回路図は読めないし、トランジスタ?グランドって何?みたいな状態からのスタートでしたが、調べまくって何とか完成できました。ネット上に星の数ほどある回路図のなかから今回作ったのは、「はじめてつくるHPA」(「KANさんの自作ヘッドホンアンプ」内)というまさに今回うってつけのもの。この回路を選んだ理由は、部品数をかなり削ってくれていて実装上のトラブルを減らせるかなと考えたからです。しかも音もいいらしい。ハンダ付け不要という製作例もあってかなり惹かれたのですが、昔のデジカメでよく使っていて家に大量に余っている充電式ニッケル水素単三電池を生かすため、今回は選びませんでした(ハンダ要らずの回路はいわゆる9V電池×2。)。相談した電気に強い友達も、基板にハンダ付けしたほうがコンパクトになるし音質的にも多少有利、と言ってたので、思い切って半田ごてを握ることにしました。

 「初めて作る」とはいえ、調べることはいっぱいありました。まず、回路図の読み方(→参考になったサイト「始める電子回路」「配線初歩の基本、スイッチについて」)。

 また、部品はどこで買えるのか。どうやら、秋葉原千石電商秋月電子、マルツあたりが大手らしい。特にマルツでは今回の回路の心臓部であるオペアンプ・LT1112のソケット版を売っていて、非常に助かりました(もうひとつのバージョンである「面実装版」だと、むちゃくちゃ小さい足を全部ハンダ付けしなければならないのです)。

 そして、小規模店も店の専門分野には強いらしい (今回利用したのは、ニュー秋葉原センターの小沢電気商会(トランジスタ)と、ラジオデパートのエスエス無線(ケース))。こういった専門店で店主とちょっと話しながら買うというのはいいものです。「古き良き秋葉原」として語られる小規模店の良さというのを今回初めて実感しました。できればなくなって欲しくないなぁ。

 あと、接点が複数ある部品(トランジスタやボリュームや入出力端子)のどこに何をつなげばいいのか、といった常識(らしい)も調べなければなりませんでした。これは、上記「ハンダ付け不要のヘッドホンアンプ」の図が参考になりました。部品の選定は、調べられた範囲でコストパフォーマンスのよさそうなものにしました。ボリュームはLinkmanの二連ボリューム、抵抗はタクマン電子のREY、コンデンサはOS-CONが時間切れで見つけられずルビコンの低ESR品(MCZ 6.3V 1500uF)。端子は、抜き差しが多くなるので金メッキのもの(千石電商)にしました。

 製作は難航しました。ユニバーサル基板を使うのも初めてですから、このようなサイト(CQ出版社内「ユニバーサル基板のプロになる!」)を参考にしながら進めて行きます。また、事前演習として、こういったソフト(電子回路プリントエディタ「PasS」)で実装図をグラフィカルに把握しておきました(このソフトは本当に役に立ちました)。一応組みあがってからも音が出ず、じっくり10分くらい観察していたら案の定配線が一箇所間違えていました。

 それにしても音が出たときは感動しました。音楽でも写真でもヘッドホンアンプでも、ものを作るということには始原的な歓びがあるように思えてなりません。ケースはタカチのアルミケース(MX2-8-10)ですが、前後面は樹脂製なので加工しやすく、結構見栄えするものになったと思います。サイズも24mm×82mm×100mmという小型のもので、十分ポータブルを名乗れる小ささです。iPhoneとの接続ケーブルを忘れて凹むこともありますが、毎日持ち歩いています。

 音質にも大満足です。iPhoneのヘッドホン出力と比べていいのはもちろん、Dr.DAC(OPA2604+OPA627AP)と比べてもそう遜色ないように思います。低域の締まりや定位感・・・そういった点で若干の差は感じますが、趣向の範囲内な気もします。特にいいのは、女性ボーカルの響きでしょうか。時々ハッとさせられます。たとえば、池田綾子奥華子あたりのボーカルが本当にいいです。

 今回作ってみてとても楽しかったので、またいくつか作ってみようかな・・・と思っていたりします。そのうち回路をアレンジしたりできるよう勉強もしてみてもいいかもしれない。目指せディスクリート、ということで(笑)。

 最後になりましたが、回路図を公開してくれたKANさんに感謝です。ありがとうございました。