2007年に敢えて選ぶフィルムカメラ


 近年の新興雑誌によくみられる「カメラ入門」記事は大抵において選定基準が明示されておらず、ひどいものでは提灯記事化しているという始末で、全く見るに耐えない。一方で、個々人の選定には様々な基準があるので「公平な記事」があり得ないというのもまた事実。したがって、ここでは選定基準を明らかにした上で「2007年に敢えて選ぶ、フィルムカメラ入門推薦機種」について考えてみたいと思います(それなりの数を使ったことのあるシステムであるニコンペンタックスミノルタの3社を中心に)

 選定基準は以下のとおり。つまり、(1)使いやすく(操作性、携行性*1、耐久力)、(2)修理可能*2で、(3)入手が容易(在庫的・価格的に)、という条件を全て満たすもの。あまりに安っぽい廉価機は省きます。中判・レンジファインダー機も除外。これらが欲しい人はこんな記事読まんでしょうから(笑)。

 写真の基礎知識ということであれば、こちらがおすすめ(久門易著・ニコンサイト内)。この記事に関する当サイトによる注釈はこちら

 カメラのデータベースは、カメラナビ(カメラのキタムラ)が最も優れていると思う。国内メーカーのものならほとんど網羅している。メーカーごと・年代ごとの検索も可能なので、自分に合った一台を探せる。

 どこで買うか。フィルムカメラはほとんどが生産を終了しているので必然的に中古を探すことになる。中古をどこで買うかは悩ましいけれども、規模と価格と店員で選ぶなら、フジヤカメラ(中野)、カメラのきむら(関東。新宿・横浜・日本橋が大きい)、マップカメラ(新宿)あたりか(@関東限定)。当たり前ながら、奇麗な使われていないものがよいです。店が近くになければ、よく吟味する(状態について丁寧な説明がされた奇麗なものを選ぶ)ことを前提に通販・ヤフオクでもいいと思います。レンズは新品で手に入るのでご安心を(マニュアルフォーカスレンズの新品が手に入るのはニコンのみ。ペンタックスミノルタのマニュアルレンズは生産終了)

  • ニコン
    • 総論
      • レンズが新品・中古ともに市場に潤沢に流通しているのがかなりの強み。最初は50mmF1.8の標準レンズ(オートフォーカス・マニュアルフォーカスともに1万円台。但しマニュアルは中古のみ)を1本買って暫く使ってみて*3、写る範囲が狭いなと思ったら35mmや28mmの広角レンズを買えばいいし、もっと望遠がよければ85mmや100mm、または望遠ズーム(70-300mmなど)を買えばいいと思います。運動会やスポーツなど長距離から写す用途を考えているなら、オートフォーカス機を選んで望遠ズームか高倍率ズーム(28-300mmなど)を追加で買えばOKかと。
    • 各論
      • オートフォーカス部門
        • 00年代<F80、U、Us、U2
          • フィルムカメラ最終世代で、操作性はどの機種も完成の域に達している。中級機F80(2万円前後)を選んでおけば磐石。この機種はニコンの中でも特にコストパフォーマンスが高い。女の子は軽量なUUsU2(それぞれ1万円台)のほうが好きかもしれない。これらは初級機だが、機能的にはどれでも問題ない。
        • 90年代<F100
          • ちょっと格好つけたいならF100(3〜5万円台)を。F80より全てにおいて躍動するラグジュアリー(カッコワライ。この年代のその他機種は修理が困難。
      • マニュアルフォーカス部門
        • 00年代<FM3A>、80年代<FM2、NewFM2、F3
          • FM3A(6〜8万円台)はマニュアルフォーカスの最終機種。オート露出(AE)を備えているのが強み。もっとも、個人的にはマニュアル露出だけで十分だと思うので、後述のFM2で十分だとも思うが・・・?フラッグシップのよさを味わうならF3(3〜5万円台)。ストイックに写真を追求するならFM2(3〜5万円台。写真学校の指定機種として有名でしたね)。どちらもとにかく頑丈で、しかもまだ修理可能。
        • 70年代<FM
          • FM(2万円前後)は上記に比べて故障のリスクが少し高いけれど、修理は可能。ただ、奇麗な商品は多くないかもしれない。

  • ペンタックス
    • 総論
      • レンズの流通量はそう多くないが、手に入らないというほどではない。小型&スリムでありながら使いやすい本体が何よりの魅力。デザインが気に入ったなら是非。レンズの選び方は同上。
    • 各論
      • オートフォーカス部門
        • 00年代<MZ-5N
          • オートフォーカス化によって、カメラはほとんど全て電子ダイヤルで操作するようになった。しかしペンタックスはマニュアル世代の操作系(アナログのダイヤルで視覚的にカメラを操作できる)を維持した機種を発売して話題を呼んだ。そのシリーズの最新機種がこのMZ-5N。これは写真入門に最も適した操作系だと思う。中級機にもかかわらずやたら軽量(425g!)なのも美点。価格は2万円前後。
        • 90年代<MZ-3、MZ-5
          • 中上位機MZ-3、中位機MZ-5もマニュアル世代の操作系を持つ。機能的には上記と大差ない(同様に軽量)。修理もまだ大丈夫ペンタックスに強い独立系修理業者もいくつかある)。価格は1万円台。狙い目。
      • マニュアルフォーカス部門
        • LXMX
          • フラッグシップ機のLX(5〜7万円台)、中級機のMX(3〜4万円台)は比較的故障が少ないのでいいと思う(修理も可能)。これより下のクラスだと故障が心配。ただ、KX、K1000などは比較的おすすめ(品がそんなにないかも)。スクリューマウント機は開放測光に制限があるので除外。

  • ミノルタ
    • 総論
      • メーカー自体が消滅したものの、サポートはソニーがやってくれる。レンズの流通量はあまり多くない。性能は一流なのに、何故か安いレンズと本体。コストパフォーマンスで選ぶならミノルタ。レンズの選び方は同上。
    • 各論
      • オートフォーカス部門
        • 00年代<α-7、α-sweetII
          • α-7α-sweetIIはそれぞれ中上級機・初級機におけるミノルタの傑作(4万円前後、1万円台)。小型・軽量志向なら後者。
        • 90年代<α-707si、α-507si
          • α-707siα-507siはいずれも中級機で、使いやすいのに死ぬほど安い(いずれも1万円前後)。修理はもうぎりぎり(箇所によってはアウトの可能性も)だが、きれいなものならそうそう壊れないだろう。実は狙い目。*4
      • マニュアルフォーカス部門
        • 80年代<X-700
          • 20年間販売され続けた名機X-700。2000年まで生産していたので、いまだに修理が可能。2万円前後。
        • 70年代<なし>
          • この時代のものは電子部品を多用しているため、修理が微妙。
        • 60年代<SRT-101、SRT-Super
          • SRT101SRT-Superともに1万円前後。これらの機種は電子部品をあまり使っていないので、いまだに独立系修理業者で修理が可能。カメラがたくさん売れた時代の機種なので数も潤沢。おすすめ。

  • その他メーカー
    • これを洩らすのはさすがにまずいだろう、というくらいデザインが優れた機種を2つほど。両方ともマニュアルフォーカス。修理もまだ大丈夫。
      • OLYMPUS OM-1
        • オリンパスは遂に30年間このデザインを超えられていない。というかこの機種の後、ずるずるとかっこ悪いカメラしか作れなくなっていってしまったように思える・・・。市場に数は多かれど、状態がまちまち。状態のいいものを買いましょう。1万円〜3万円くらい。
      • CONTAX Aria
        • クール。これ系のデザインが好きなら。5万円前後。


 これらの中から敢えてベストバイを選ぶならどれかを最後に考えて終わりにしたいと思います。ずばり、オートフォーカスならペンタックスMZ-3or5or5N、マニュアルフォーカスならニコンFM2orNewFM2*5。前者は、オートフォーカス機の中で数少ない、写真を理解するのに最適な操作系を持っているから(マニュアル露出で撮れば、写真の仕組みを最も早く理解できる)。マニュアルフォーカス機ならそれら操作系は持っているのでどれでもいいと思いますが、適度な重さ、剛性感、レンズの豊富さ、適正な価格などの点から選ぶとFM2かと思います。・・・普通の結論だ(苦笑)。あ、実家を漁るのも忘れずに!出てきた機種を使うのは素敵なことです。


*1:800g以内。500gを割る機種には軽量という注意書きを付します。

*2:AF機は、メーカーがまだ補修部品を保有している新しいものが対象になる。MF機は、いわゆる「機械式カメラ(バネ・ネジ・歯車などからシャッターを構成しているので現在でも修理が比較的容易)」、が主に対象となる。これに相対するひとつの考え方として、「壊れたら駄目モトで修理に出してみて駄目だったら諦める」というスタンスもアリでしょう。選択肢はそのぶん(無限に近いくらい・笑)広がります。

*3:標準ズームレンズ(28-80mmなど)でもいいのですが、ズームを初めから使うのは遠近感の意識が散漫になるので、強く勧めません。もし使うなら「カメラを構えてからは微調整を除いて絶対にズーミングしない」、つまり「いま使っているズーム域がどこかを意識する」のを徹底すべきと考えます。

*4:507siの重量について誤りがあったので当該記述を訂正・削除しました。420gとしていたのですが、これはキタムラのサイトが誤っていますね。どうやら565gのようです。

*5:とはいえ、上記に挙げた機種ならどれでもいいと思います。マニュアルフォーカスかオートフォーカスかを選んだら、あとはデザイン、大きさ重さ、機種の位置づけ(初級機でいいのか、中級機くらいは欲しいのか)等から選べばいいのでは。