愛機称揚・ニコンF3


 一言で言えば、「辿り着いた名機」。写真を始めてからたびたびシステムを変えてきたが、結局はニコンに落ち着いた。
 フィルムカメラがここまで縮小してしまった現在、そのなかで更にマイナーなマニュアルフォーカス(=MF)カメラを現在も生産するのは、ニコンコシナのみだ(←偉い!)。そして、より幅広いラインナップを持つということで、メインシステムをニコンに統一したのだった。

 星の数ほどあるニコンMFカメラのなかで何を使うかはひとつの問題だ。ニコンのボディは他社に比べて剛性感があって、いかにも「精密に作ってます」という感じがするので何を使ってもいいのだが、その中からあえて選んだのがこのF3アイレベルだ。

 その理由はまず、信頼性。かつてプロ機として20年も販売されたという事実がそれを物語っている。電池切れ等に備えて緊急作動レバーも装備している(替えの電池は常に持っているが、それでも交換前にあと1カット欲しい、というときに使える。雨の日に電池が切れたとき、1度実際に使った。)。
 そして、絞り優先AE。なくても写真は撮れるがあれば楽だし、どうしてもすぐにシャッターを押す必要があるときもあるからだ。もっとも、一説によると、F3はAEを使わないのが正道という人もいる。これは、AEロックボタンが若干押しにくい位置にあること、露出補正にロックがかかっていることを理由としているようだ。しかし、前者は慣れで十分カバーできるし、後者についても標準反射率に近いところでAEロックをかければ問題ない(ネガレベル)。画面全面が真っ白・真っ黒などの場合にのみ補正するなりAEを解除するなりすればよいと思う。
 ファインダー性能もよい。FM3Aスクリーンには明るさで劣り、ピントの合わせやすさは同等といったところなので、個人的にはFM3Aスクリーンの方が好きだ。しかし視野率100%は撮るときに緊張感が出る。この視野率100%はプロ機最大のポイントだと思う。昔は、プリントでどうせトリミングされるから100%である必要はない、という説もあったが、ぼくはフィルムをスキャンしてプリントする(=できるだけトリミングしないでプリントする)ので、視野率は高い方がありがたいのだ。
 デザインもスマートで無駄がない。特にグリップが必要最小限の体積なのがよい。現代の一眼レフはなにやらごてごてぼこぼこしている感があって好きになれない*1。そして、素材感についてみても、金属外装でならではの品位を感じさせてくれる。たびたび引き合いに出して何か恨みでもあるのかと疑われそうだが、現代の一眼レフはいくら外装に金属を使ったところで表面のつや消し塗装が小賢しくて好きになれない・・・革張りでもないし・・・。念のため言っておくけれども、現代のカメラに恨みはない。この時代(80年代前後)のカメラが好みなだけである。
 最後に、シャッター音。シャッター音は低音寄りの渋いもので、変な例えだがこのシャッター音を聞くとぼくは菅原文太を連想する。ぶっきらぼうだが深みを感じさせる、そんな台詞が聞こえてくるようだ(変態と笑わば笑え・・・苦笑)。

 レンズは大きいほうが似合う。ぼくがよく使うFマウントのレンズはAi-s24/2.8、ULTRON40/2、Ai-s80-200/4だけれども、このF3のために(あと、ズームがあるとやはり楽だという理由で)トキナーのAT-X24-40/2.8を入手した。このレンズは適度にごつくてF3によく合う。しかも高品位な外装は現代の高級レンズを凌駕する。F3との組み合せは結構重くなるが、両者相俟って精悍なことこの上ない。なお、写りも十分満足のいくものだ(開放から超高性能というわけではないけれども、絞ったときにきっちり結果を残してくれることのほうが大切)。

 結論。やはりF3は名機だった。


●スペック
発売年:1980年
レンズ:ニコンFマウント
シャッター:B,8-1/2000
ファインダー:アイレベル式ペンタプリズム、倍率0.8倍、視野率100%
サイズ:148.5*101.5*65.5(mm)、715g


*1:この点、オリンパスデジタル一眼レフE-410はシルエットとして見れば結構好きだが、造りが極めて安っぽいのとファインダーが小さいのと撮影縦横比が3:4なのがちょっと受け入れ難い。