序曲で振り返る大学時代


 大学オケの旧友から手紙をもらった(mixiで)。

 彼は遠く海の向うで元気にやっているらしい。さっそく返事を書いて送った。送信したあと、大学時代にやった曲を無性に聴きたくなった。心身ともに疲労しているときは、重いシンフォニーはちょっと・・・なので、序曲縛りということで印象に残った曲を何曲か聴いてみる。

 まず、ブラームス「大学祝典序曲」。大学の入学式・卒業式で飽きるほど何度も演奏した曲だ。イッセルシュテット指揮、北ドイツ放送交響楽団の演奏。

 冒頭はいい意味での重さを感じさせる。中間の金管コラールにさしかかったところでは、昔の苦労した記憶が蘇ってくる。あの時は何も周りが見えていなかったけど、いまこの曲を演奏すればまた違ったものを作れるんだろうな・・・と妄想する。

 コラールの後も全体に重めのテンポが続く。これに微妙な横の揺れが加わるからたまらない。本当に落ち着く。イッセルシュテットの長所を堪能できる。終結部は本当に重い(最後数小節はフェルマータがかかったかのようだ)。しかし破綻なく、よく鳴っている。自分で演奏した曲なのでかなりの数の録音を聴いたが、これがぼくの理想の大祝だ。

 ウェーバーの序曲「オベロン」も印象に残っている。

 ぼくの傾向からしウェーバーのような柔らかーい音楽はあまり肌が合わなそうだが、何故かウェーバーは好きな作曲家なのだ。カラヤンの目が眩むような豪華絢爛な演奏も捨てがたいが、今回はプレトニョフ指揮、ロシア・ナショナル管弦楽団の演奏。

 とにかくテンポが早い。この曲は有名なびっくりポイント(ppのなか一発大音響が鳴るとこ)があるが、その後の弦のフレーズがとにかく早い。しかも一糸乱れぬ正確さ。弦楽器が整然と弾く早いパッセージの音形はいつ聴いてもたまらない。タテノリとヨコノリのメリハリが利いているのもいい。録音も良好なので、オススメの1枚。同梱の序曲「オイリヤンテ」も密かにいい曲。

 最後はショスタコーヴィチ「祝典序曲」。このときのメインは第九だったが、第九にこの前プロを選んだセンスには脱帽。素晴らしい組合せだと思う。演奏は、クチャル(クチャール)指揮、ウクライナ国立交響楽団ショスタコーヴィチのフィルムミュージックを集めたCD(3枚組)に入っていた。

 この曲も印象深い。このときは既にOBだったが、一番初めのセクション練から顔を出していた記憶があるから(苦笑)、最初から最後まで完成に至る経緯を見させてもらったことになる。最初は拙いものだったが、最後の方には一気に伸び、一級の演奏に仕上がった。これこそが学生オケ特有の力。この曲に参加することで学生オケならではの力を間近で見ることができ、とても刺激になったことを覚えている。

 このCDの演奏はというと、無名の組みあわせながら水準以上に仕上がっている。ところどころで詰めの甘いところもあるにはあるが、上等だろう。クチャルは1960年生まれだというから、まだまだ将来が楽しみだ。確か安いCDだったと思うので、見つけたら買ってもいいと思う(ジャズ組曲も入っている)。

 ざっとではあるけど、とりあえずこんなところだろうか。多分に美化されたであろう思い出ながら、たまに振り返ってみるのも悪くない。ついついウイスキーも進んでしまうというもの・・・(←飲むなよ)。


Weber:Konzertstuck/Overture

Weber:Konzertstuck/Overture


JAZZ & BALLET SUITES - FI

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 イッセルシュテット・ブラームス全集(HMV)