通勤地獄に勝つイヤホン




 「東急田園都市線沿線にだけは住むな」というのがぼくの考えで、これはぼく自身が15年近く住んだ*1上での結論だ。データで見ても、この沿線は私鉄一の混雑を誇る(→AllAboutに記事がある)。しかも、このデータは、「対象区間における最混雑時間帯1時間の平均値」のデータであることに注意を要する*2。各駅の乗車率は稀に落ちることがあるため、急行の乗車率はこのデータより上であると思われる。二子玉川以西に住んでいると、朝の時間帯などは実質的に急行でないと使い物にならないので、推定200%オーバーの乗車率に耐えねばならない。これは、複々線化・ターミナル駅ホームの面数拡張・5ドア車導入などを長年怠ってきたツケとしか言いようがない。

 とはいえ、一人暮らしをするというのも不経済なので、あと少しだけこの沿線に住まなければならない。当然のように本を広げるのはほぼ不可能だし、読むのが無理なポジションで読んだら周りに迷惑だ。

 そこで、やはりオーディオに頼ることになる。家でゆっくり聴く、ということができない環境にいるから、ちょうどいいといえばちょうどいい。しかし、この沿線は二子玉川以東で地下に潜るため、普通の装備では快適に聴くことができない。

 長い前置きになったけれども、そこで買ったのが耳栓型イヤホン、SHUREのe2c。これがあれば何とか耐えられそうだ。

 このイヤホンは、耳栓型のなかでもかなりの遮音性をもつ。地下に入っても、遮音なしで地上を走っている程度の音量しか耳に入ってこない。全ての地下鉄利用者におすすめしたい遮音性だ。これなら必要以上に音量を上げなくてもいいから、音漏れの心配がないのもいい。

 音質はどうか。まず、耳栓型の特徴として、若干のコモリはある。一般的に言って、遮音性が高ければ高いほどコモるけれども、このイヤホンなら調整の範囲内だ。大抵のプレーヤーはイコライザーで調整ができるから、それで調整すれば問題はないだろう。低域と高域を持ち上げ気味にしてやればいいんじゃないかと思う。ただ、いま使っているプレーヤーは秋葉原で売られていた3000円台の安物なので、マニュアルイコライザーがない。「Rock」のプリセットで我慢しているけれども、これだと中域が抜け気味になってしまう。プレーヤーも買わないといかんかなぁ。

 このイヤホンは低域に定評があるようで、確かにいい。遮音性の高さとも関係があるかもしれないが、音にちゃんとスピード感と輪郭がある。ただ、レンジ自体はあまり下まで伸びていないので、あたかもフルレンジの小型スピーカーをパワフルなアンプで鳴らしている感じに近い気がする(ただ、ボーズのフルレンジのようなレベルには達していない)。音の定位は相当よく、中音域〜高音域の質感も耳栓型ということを意識させないよさがある。

 一方、イヤホンには不可避なのかもしれないが、どうしてもオーバーヘッドないわゆるヘッドホンに比べると、壮大さなどは全く出てこない。例えていえば、どんなに音楽が盛り上がっても、コップの中の嵐のような感じ。シンフォニーが最高潮に達するときなど、その違和感も最高潮に達する。これまでずっとヘッドホンだったので、これが意外なところだった。もっと上位のモデルなら解消できるのかな・・・?これは欠点といえるかもしれないが、遮音性のメリットはあまりに大きく、欠点を隠して余りある。どんなにハイファイなイヤホン・ヘッドホンでも、騒音が入ってきたら全てが台無しなのだから。

 また、もうちょっと大きい欠点としては、歩くときの衝撃がダイレクトに耳に伝わってしまうという点が挙げられる。これは結構気になる。できるだけつま先から地に足をつけるように(すり足気味?)歩けば軽減できるが、見た目は割とアヤしいような気もするし・・・何より疲れる。なお、すり足にも長所はあって、いつ足払いを受けても大丈夫だ(笑)。

 総評としては、遮音性の高い耳栓型なのに音がなかなかよいイヤホンという感じ。これでようやく朝の地獄がプチ地獄くらいに軽減された。値段分の価値は確実にあると思う。

<追伸>
 理想のイヤホンorヘッドホンを考えてみると、やはりヘッドホンがいいと思う。ドライバーユニットのサイズは重要だ。響きの余裕が全く違う。具体的には、現在の電気的ノイズキャンセリング機構が音質的な問題を更に解決して、それがハイファイなヘッドホンに搭載されて、しかもMP3プレーヤー機能まで内蔵すれば、ぼくは買い換えるだろう(値段がすごいことになりそうだけど)。

*1:10年二子玉川以東、5年は二子玉川以西。

*2:国土交通省「公共交通の『快適性・安心性評価指標』について」参照。