さらば暗室


 モノクロ写真が好きだ。

 モノクロ写真の世界では「自家処理でないとモノクロに非ず」という不文律(でもないか)が支配していて、フィルム現像及び印画紙へのプリントという2つの技術に精通しておかねばならないといわれている。モノクロ写真が従来のカラー写真と異次元を形成しているのは、ここに大きな要因があるように思える*1

 ぼくもご多聞に漏れず、自室を暗室にして、暗室で写真を焼いていた。

 しかし、めんどくさがりなぼくは月に1度〜2ヶ月に一度しか暗室に入らない。そしてプリントの技術は一朝一夕に得られるものではない。これでは上達しない、という結論に達した。とるべき道は2つ。①暗室に籠もる日を増やすか、②デジタル化するか、どちらかだ。

 ①の道は、かなり厳しい。薬品の溶解や引き伸ばし機のセットに30分はかかるし、片付けは1時間くらいかかる。プリント以外にこんなに時間を取られては、到底①の方法はとれない。

 ②の道はどうか。入力(撮影&現像)についてはデジタルカメラがあるからいいけれども、問題は出力(プリント)だ。これには、コスト及び仕上がりの問題がある。モノクロの印刷できるプリンタは、現状ではA3のものしかなく、設備投資費がかかる。そして、仕上がりについて言えば、相当よくなったとはいえ、バライタ紙*2のプリントには及ばないというのが一般的な評判だ。

 そんな折、エプソンのPM-4000PXというA3プリンタが4年のロングセラーという華々しい実績を以て生産中止ということになった。生産中止は値崩れにつながるから、上記のコスト問題は軽減される。賞金も出る。仕上がりの点については、もともと下手っぴプリントだったから、それよりはいいプリントができるのではないかという期待をしてみる。

 対抗馬はいくつかあった。HPのPhotosmart8750はグレーインクを積んでおり、モノクロもいけるけれども、マニュアル設定に難がありそうだ。キヤノンのプロ機は開発が遅れていて発売になっていないし、多分高いのでパス。PX-5500はベストチョイスだが、如何せん高いのでパス。PM-4000PXなら各所にノウハウも積みあがっている上、何より(比較的)安い。デジタルモノクロプリントの入門としては申し分ないと思えた。

 ということで、買ってしまいました、PM-4000PX。やたらでかい*3ので、オーディオラックの最上段を全てあけるという最恵国待遇を与えてあげました。さしあたってはフィルムをスキャンしてプリントしていこうかと思っております。(デジタル特有の粒子感のなさは難題だし、フィルムカメラに愛着もあるし)

 とはいえ、買っただけでは駄目だというのがこのクラスの製品にはつきもので。このプリンタについても色あわせなどの難題が待っているわけですが、それについてはまた今度。結論だけ言えば・・・「ブラボー!」

 

*1:デジタルの波によって、カラーも自家処理になってはきたが、色にこだわって云々というのは多数派ではない。

*2:コーティングされていない印画紙で、仕上がりが美しい。

*3:重さ11.2kg!