1970年代NIPPON(北井一夫)


1970年代NIPPON

1970年代NIPPON

 第一回木村伊兵衛賞受賞者・北井一夫の初期代表作を中心にまとめた写真集。受賞対象ともなった写真集「村へ」を中心に再構成したものとなっており、70年代の日本の農村をほぼ全域にわたって網羅している。全編モノクロームで、ドキュメンタリータッチのトーンである。

 こういうトーンだけでも好みなのだが、内容も本当に濃密。

 まず、写真に写っているもののことごとくに気が配られているのが分かる。素材の選択と構図に無駄が全く無い。写真というメディアを選択したことについての説得力が画面から溢れているように感じられる。テーマが撮影者の中で明確になっているのがよく分かる*1し、構図の勉強という意味でもこれ以上の手本はないと思う。

 そして、テーマ選択とは別の次元の話で、いわゆる「写真家内部での知識・定見の醸成」についても全く脱帽するほかない。この点は土門拳がよく強調していたことなのだが、実際写真を見てこのことを実感させられることというはそうそうないように思える。写真のもつ記録性を生かすというのなら、まさにこのような方向しかない。

 まぁ一言で言えば「こういう写真を撮りたいな」ってことになりますか(笑)。


*1:このことは、本人のインタビューからも読み取れる→こちら

参考リンク:scannersブログ北井一夫写真展に関する記事。おすすめ。)