世界写真史(編:飯沢耕太郎)


カラー版 世界写真史

カラー版 世界写真史


 最近読んだ本に関して立て続けに3連続更新予定。まずは、最近目にした土門拳先生のお言葉*1に従い、写真史をあらためて概観してみる。美術出版社のものが面白そうだったので、引用を交えながらいってみましょうか。

 「本書は、写真発明から現在に至る、約160年の写真表現の歴史を、代表作の図版とともに概観しようとするものである。」
 カラーの図版ということもあり、概説という意味に限定すれば、なかなか分かりやすい。文章も一部悪文がみられるということを除けば、だいたい読みやすくなっている。

 ただ、写真史で叙述が困難なのは、80年代以降のいわゆる現代写真についてである。私個人もよく分かっていないので、このへんを期待して読んだ。
「1980年代以降の写真表現を、リニアな『写真史』の掉尾*2として概説してみせることは困難である。」
 ソウデスカ。

 「可能なのは、『写真芸術以後』としての『現在』を、表象文化的な諸力の交錯する場として記述することである。本章では『写真芸術以後』と規定されうる『現在』を、『セルフ・ポートレートとシミュレーショニズム』『タイポロジー*3とポスト・ソーシャル・ランドスケープ』『記憶―巨大な物語と私的な逸話』という複数の観点によって整理している。1980年から2000年のほぼ20年間におよぶ写真表現の諸動向は、多分に重複を含むこのような領分にひとまず定位されるであろう。」
 この3点に整理する区分方法は、とりあえず今の自分としては納得がいった。(この観点整理から文章が起こされているので当然かもしれないが)。一部直訳くさい(というか、一文が長く、単語のセレクトセンスが悪い)ところは読みにくく閉口したが、筆者がきちんと咀嚼できている(と思われる)ところは極めて明快に書けていると思う。

 印象に残ったのは、セルフ・ポートレートの意味、20年代の新即物主義とタイポロジーの関係、リヒターの「アトラス」、馬小虎の作品、荒木経惟に関する記述など。

 今まで分かりかねていた荒木が、少しわかりそうかも・・・。



*1:写真史はおさえておく必要がある、みたいな内容。篠山紀信も言ってた気がする。

*2:「ちょうび」と読むらしい。「たくび」は誤読。本書の性質上、こんなところでカッコつけても読みにくいだけでは・・・。

*3:類型学