森山×佐内対談


 今日、ワード資生堂の企画で、森山大道佐内正史の対談が行われたので、行ってきました。森山大道氏の言葉を聞くのは初めてです。完全に森山氏目当てでしたが、佐内氏を理解できたらという意味でも楽しみでした。それにこの両者は作風で言うと異色の組み合わせだと思うので(交流はあるようです)、この両者の対談はどうなるのかという興味も高かったです。

 会場は東京銀座資生堂ビル。やたら洒落ていて、普通にスニーカーとか履いてた私はビルに入るとき微妙に後悔。会場に入ると、予想はしていましたが女性が多かったです(8割くらい?)。頑張れ男。

 オープニングは、佐内氏の作品をスライド鑑賞。中国自動車道を走りながらの写真の連作でした。この一連の作品群を写真集としても出すつもりのようです。正直私には何がいいのか分かりませんでした・・・。その後トークに入ったのですが、会話が微妙にかみ合ってないところが気になります。年齢の差以上の隔たりが感じられました。何せ佐内氏は「そうですねー」という相槌が多すぎて会話が発展しないのです。そんなわけで若干ダルダルだったのですが、途中で森山氏が、自身の最新作「ブエノスアイレス」の解説(というか紹介)を始めてくれまして、含蓄のある言葉とともに写真集を最初から最後まで見ることができ、これはかなりよかったです。新宿を撮るときと同じで、どす黒いトーンによって語られるブエノスアイレスに引き込まれます。トークの中で、森山氏が視線が上に行かないというような話をしていた(佐内氏は視線は上に振ることが多いとのこと)のですが、まさにそのとおり。私も割と下を見て歩いているので、その辺も森山氏の写真が好きな理由のひとつなのかもしれません。ちなみにその間の佐内氏は「かっこいいっすねぇ」「いいですねぇ」の一点張り。言葉で写真を語る人ではないようですね、佐内氏は。

 続いて佐内氏の最新作「Windows and Applen」の紹介。オープニングのスライドに比べてこちらはいいカットが結構あり、楽しめました。しかしこの写真集からは、画面の見た目が面白ければそれでいいという刹那的な感じを受けます。雰囲気だけで強引に持って行こうとする写真が多い(全てではない)、と言い換えてもいい。被写体への共感が足りない、と言い換えてもいい。ちなみに、糸井重里氏のサイト(→ここ)では、佐内氏の写真をして「べたつかないやさしさ、とでもいえばいいのだろうか」と評しているが、「べたつかないやさしさ」とここでいう「被写体への共感」とは別次元の問題であるというのは記しておかなければならないかもしれない。

 また、写真というのは、否が応にも撮り手の意識・見識・人柄などを反映するものですが、私は、写真から受ける佐内氏の意識に共感するところが少ないです(もちろん、いいと思えるものもあります)。ただ、そのような写真もアリだということ自体は否定できず、寧ろ、そのような限界的境界線を写真に引くという近年の一連の写真は積極的に評価できるものだと思っています。一定の功績を残した佐内氏がこれからどのような方向に進んでいくのかという意味では、これからが氏の真の力量を問われる時期なのでしょう。

 ワード資生堂の企画では、過去には上野千鶴子石田衣良などの個人的に注目したい人たちが対談を繰り広げたそうです。私は今回初めて知ったのですが、これからも注目していきたいと思わせる、いい企画でした。19時〜21時、2500円。

 ■関連リンク■
 森山大道公式サイト(内容充実。「写真よさようなら」は必見)
 佐内正史公式サイト
DAIDO MORIYAMA 「Buenos Aires」

DAIDO MORIYAMA 「Buenos Aires」