チャイコフスキー4番/小澤征爾指揮・ベルリンフィル(1988録音・グラモフォン)


 課題の嵐にもようやく慣れてきたので、ぼちぼち更新を・・・。

 世界のオザワ、と称される割には一般人に知名度の無い小澤征爾。実はイチローと並ぶくらいすごいことをやってるんですが・・・クラシック音楽の悲しい現状です(のだめカンタービレのドラマ化の暁にはこの状況は必ずや好転すると信じていますが)。

 さて、その世界の小澤の比較的最近の録音です。しかも相手はベルリンフィル(以後BPOと表記。←放送倫理の業界団体もとい第三者機関、ではない)ということで、全く不足無し。

 1楽章冒頭の、例のファンファーレからして完璧な世界が広がっています。オクターブ下のホルンが実に良く頑張っています。ホルンの妙というのは、「魔弾の射手」(ウェーバー)のような美しげな響きだけではなく、強奏もまた素晴らしいものだ、と思わせてくれます。

 小澤節は指揮棒を通してBPOにしっかり伝わっており、フレーズ毎に自然な歌わせ方をさせつつ、全体の流れをも盛り上げます。しかも、それでいて縦がズレないのが凄い。ズレない、というのは音楽の基本なんだなぁと改めて感じます。かといって、高校の吹奏楽のように、縦が揃っている「だけ」でも音楽にはならないのだから、音楽とは何とも捉えどころのないものであることよ(詠嘆)。

 とにかく、終わりまでほとんど破綻が無いので安心して聴けます。クラシックはこうでないといけません。しかも4楽章のラストは、およそオーケストラの大音量表現の極致を感じることができます。びっちり揃った幾重の音が燎原の火のように進み、ゆっくりめに最終コーナーに入りつつ、最後の直線で、まだこれ以上音量が上がるのかという驚きと共に一気に加速する。競馬で言えば、強烈な追い込み馬を見た気分。私は、この演奏を以て、オーケストラこそ世界最高峰の音楽表現手段である、とすら主張できそうな気分がしてきます。最後の大太鼓の一発が僅かにズレてますが、大推薦です。