itan egoiste購入

populaire2005-05-06


 初めてMP3プレーヤーを買ってみた。itan egoisteという密閉ヘッドホンタイプのものです。もう散々ブームを通り越した感のあるMP3プレーヤーながら、私は今までどうしても食指が動かなかったのです。それは、何故か。

 それは、ケーブル。

 ウォークマン誕生以来、ずっと人類を悩ませてきた、ケーブル。

 出すときに絡み、ラッシュでは人にひっかかり、しまうときも面倒。挙句の果てに断線・・・。我々はこのストレスに完全に慣れてしまったのだろうか。いや、それは否である。一度大昔にワイヤレス式のウォークマンWM-WX808を使っていた時期があったけども、受信部は大きいし(ちょうど今のメモリ型オーディオのように、首からかけるような感じになる)、本体との位置関係でたまにノイズが乗るし、混んでる電車でたまに混線する(確かチャンネルが2つしかなかった)、という刺激的なものだったので、それはそれで面白いけども、いつしか使わないように・・・。時代はカセットからディスクマン、MDときてMP3になっても、ケーブルだけはそのままでした。

 あと、ケーブル以外にも、どうしてもひっかかるものがありました。MP3プレーヤーの核心は、全てのCDを持って歩けることだという。いやしかしですね、全て持ち歩いてどうすんだと。それは確かに真新しい価値だし、デザインも出た当初は斬新めでしたから売れたのは分かるんですが、冷静に考えてみると、手持ちのCDを全て外に持ち出すことにそこまで価値があるんでしょうか?一時期聴くCDなんてせいぜい10枚もないでしょうに。

 とまあ、こうしたいくつかの疑問があって、MP3プレーヤーには手を出していなかったわけです。とはいえ、MP3プレーヤーに期待する面があったのもまた事実。期待していたのは、プレーヤーを時計に内蔵するタイプ、そしてヘッドホンに内蔵するタイプの2つです。
 時計のは実際いくつか出ましたが、実際はなかなか使いにくい感じだった(コードが本体に巻き取られたら今でも魅力的なものになりそうだけど・・・)。
 ヘッドホン内蔵タイプも、今まで散発的に数機種出たものの、どれも決め手に欠ける半端なものが多かった。あるものはWMAに対応していなかったり、あるものは耳かけ型だったり(個人的に好きでない)・・・。

 一瞬話を脇へ逸らしますが、実は、ヘッドホンタイプでなくても、コードの呪縛からは逃れられます。それは、ワイヤレスヘッドホン。bluetoothという技術を使って、かなりクリアに信号を送れるらしい。ところが、まだ対応製品がほとんどない。あるものは耳かけタイプでしかもヘッドホン部がいい加減な作り、あるものは有名メーカーのチューンを謳いながら、冗談かと思うような大きさ。まだまだこれからどんどん発展していきそうな分野ではありますが、コストを考えるとプレーヤーを内蔵する方向のほうが生産的な気がします・・・?あと、コード巻取りのヘッドホンもいくつかありますが、耳かけが論外として、パナソニック1機種オーバーヘッドタイプであるのですが、これまた論外の質感・デザイン。1度店頭で見てみると面白いですよ。正に噴飯ものです。

 さて、話を元に戻して今回のegoisteは、そのプレーヤー内蔵型ヘッドホンです。まず使ってみて思ったのは、中学1年のとき買ってもらったウォークマンGX-90から早13年、ようやくあの忌まわしいコードから開放されたー!!、って感じです。本当に爽快。期末試験が終わったときの開放感と同じ位開放感あります。これだけでもう価格分は元を取った気がします。最高。

 舞い上がっておきながらも、実はスペックは実用ぎりぎり。メモリが256MB、MP3とWMAに対応し、USB2.0。シャッフルやレジュームは無し。原理的に液晶を付けても無駄なので、大量の曲は管理しにくいです。<5/8訂正:レジュームはあります。しかし、曲中レジュームはできません。>

 しかし、私が聴くのは8割方クラシックで、相対的に曲数が減るので液晶不要、レジュームもシャッフルも不要(ブルックナーとアンダーソンが交互に聞こえたらおかしくなりそう!)。液晶を見てタイトルを確認する必要もないのです。実はこの機種は実はクラシックを聴く人にこそ使えるものなのか・・・?とすら思います。

 そこで肝心なのが音質、ということになります。まだエージングも全然できてないので断定はできませんが、「原音忠実」という観念からは相当遠いところにいます(笑)。プレスリリースでは「音圧を重視した」とあるので昔のバスブーストレベル3、みたいなのを想像してしましますが、意外とその点は良心を残した音です。the plugのような人知を超えた低音ではありません。  「原音忠実から遠い」というのは、イコライザーをオフにできない設計から来る違和感、と言えばいいでしょうか。本機はヘッドホンの外部入力端子があるので、それでCDなどを聴いてみるとヘッドホンの元々の素質が分かるのですが、結構低音がこもり気味です。そのこもりをイコライジングでうまくカバーしている感じではないかかと思います。イコライザーは5モード(JAZZ,EGOISTE,LIVE,CLASSIC,R&B)ありますが、私にとって実際使えるのはEGOISTE(かなり気合い入れた波形らしい)かCLASSICの2つです。EGOISTEは高音と低音が実に上手く伸ばされている感じです。すごく乱暴な例えで言えば、FMラジオの音質に傾向としては近いものがあるように思います(相当誇張気味に言えば、ということで・・・)。CDのような生っぽい音ではないけども、さらさらした感じの心地悪くない音。シャリついたりこもったりといったものは極力押さえられています。

 何度も言うように、間違っても「原音忠実」ではありません。写真に少し詳しい方に例えを持ち出すなら、キヤノンデジタルカメラ(超・記憶色重視)のような音です。結構心地良い音ながら、こればかり聴いていたらちょっと感覚がおかしくなってしまいそう。

 しかし、よく考えてみると。写真のキヤノン画質は許せなくても、音楽の「記憶音」重視はそんなに悪くないのかな、という気がします。写真は、一度撮ったら二度と同じものは撮れません(スタジオの静物写真とかは別)。一方音楽は、再生装置が限りなく多用で、様々な環境下で好きなだけ同じ演奏を聴くことができます。そして、その全ては所詮「原音」の婢なのです。

 このような違いを考えると、私にとってEGOISTEモードは、個性のひとつとして十分容認できる範囲です。しかもクラシック界でのFMは、CDになる前の海外名演奏が生放送とかで放送されたりするので、FMっぽい音を聴くと、そのときの感動がなんとなく蘇ったりもするんですねぇ。

 という感じで、音には割り切りが必要です。メーカーは低音族に売りたいようですが、寧ろ私は「どうしてもコードが嫌い!」という同志にこそ勧めたいところです。安いし・・・。これが売れることで、今後、こういったヘッドホンの開発に弾みがつくと思えばお金の出しがいもあるというものです。

 最後に補足をいくつか。巻き戻しボタンを一回押すと、普通曲の頭に戻ると思うんですが、本機はその更に前の曲に戻ります。2曲目途中で巻き戻しすると、2曲目頭でなく、1曲目頭に戻ります。これはバグでは・・・?あと、WMA再生時に左チャンネルにわずかにノイズが乗っています。この2点は販売元に聞いてみようと思ってます。WMAは滅多に使わないのでいいと言えばいいんですがね。

 とりあえず今日はこの辺で・・・。あ、我が家のメインマシン、win98では使えません(泣)。サブでXPがあるのでいいんですが・・・買い替えの時期か・・・。

参考リンク> レビュー2本 http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20050415/dev109.htm
なかなか参考になります。デザインに辛い評価ですが、私は頑張ってると思います。

http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0504/15/news099.html
egoisteモードの中域がこもる、と言ってますが、ヘッドホンの素性を考慮してあげて欲しいものです。あと、12000円前後でやや高価、とは言えないと思いますが・・・。

http://www.asahi-net.or.jp/~an4t-tkns/taro/walkman/walkman.htm
ウォークマン道へようこそ”というサイトです。冒頭の作者の言葉、「週末秋葉原に遊びに行っては吉野屋で牛丼食って買えもしない高級オーディオをいじりまくって各種製品カタログをもらって帰るのが習慣となり、特にソニーウォークマンの新機種は必ずチェックしていたものだった。あの時ウォークマンは日々の活力を与えてくれるミュージックプレーヤーであり、その精巧なメカニズムでいつも感心させられる身近なハイテクツールであり、音楽人生の伴侶であった・・・。」この言葉、私は心から共感します。懐かしすぎて泣きそうになりました。おすすめ。