ショス5・ビシュコフ&ベルリンフィル(1985録音)


ショスタコーヴィチ : 交響曲 第5番 ニ短調 作品47

ショスタコーヴィチ : 交響曲 第5番 ニ短調 作品47



 またショス5ですが、お付き合いください。私の本番が3月12日、もう残り2ヶ月なので・・・。年末に各方面から頂戴したご意見を生かした企画も考えてますので、お楽しみに。

 セミヨン・ビシュコフは1952年生まれで、同じくロシア生まれのゲルギエフより1つ年上になります。ゲルギエフと比べて大分遅れをとった感もありますが、個人的にはすごく好きな指揮者です。まず、テンポ運びがいい。フレーズとフレーズの「間」に何ともいえない想念のようなものが漂うのは、ビシュコフ節と言ってもいいのではないかと思います。時折思い切ったリタルダンドを入れたりするところも面白い。音のバランス感覚や音楽運びの自然さについてみても、今世紀の巨匠候補として実力十分です。

 このCDについても以上のような特質がよく出ており、特に3、4楽章が白眉です。3楽章はベルリン・フィルという超一流オケと見事に一体化しており、ビシュコフの美学を純度高く感じることができます。ゆっくり丁寧に歌い上げ、盛り上げるところはしっかり盛り上げてくれます。4楽章ではロシア系指揮者にありがちな爆演から決別しつつも勢いは殺さずに、ベルリン・フィルの強靭な響きを出しきっています。とても33歳の指揮者とは思えません。対して朝比奈隆の若い頃の演奏ときたら、それはそれは・・・(以下自粛^^;)。

 ただまあ難点がないわけではありません。ひとつは、1楽章におけるオケの集中力がいまひとつで、ホルンの鳴りが悪かったり、縦がかみ合わないところがいくつかあったりということ。もうひとつは、2楽章が何とも煮え切らないこと。ちょっと柔らかすぎるんじゃないかなぁ、と。4楽章もティンパニが弱かったりトロンボーンの裏拍のリズムが悪かったり。後者について推測をお許し頂けるなら、「裏拍を待ちすぎるな」なぁんて下手に指示を出して奏者のプライド(例:そのくらい俺だって分かってるよ!)にぶつかってしまったのではないか。それで、トロンボーンだけ不自然に裏拍を前に出す演奏をされてしまったのでは・・・?まあ、完全な推測なのですが。

 実を言うと、私は今回CDを聴き返すまでこの演奏がベストだと思っていたのですが、数年振りに聴いてみると粗も見えるものですね。一言で言えば、指揮者も私も「あのころは若かった」ということでしょうか。この録音から20年を経た今、もう一回この曲をやってほしい。必ず名演になるでしょう。このCDについても、3・4楽章は必聴と言えます。