チャイコ交響曲5番/小澤征爾&ベルリン・フィルハーモニー


 グラモフォン・録音年不祥(90年前後と思われます)
 amazon

  小澤氏の演奏はどれをとっても「小澤節」と言っていいような自然かつ深みのある演奏ですが、この演奏も奇を衒うようなところなくまさに小澤節。特に音のバランスなどは全ての局面でほぼ完璧です。オーケストラも指揮者の脳と直結したようにテンポや強弱を変化させ、期待に違わないものです。小澤征爾とベルリン、という組み合わせから予想される通りの良演だと思います。

  ただ、チャイコフスキーの5番というと、どうしてもゲルギエフの演奏は避けて通れません。静と動、又は弛緩と緊張、という対比をとことん極大化したゲルギエフに比べると、この演奏はちょっとおとなしいかなという印象になってしまいます。ただ、スタジオ録音の強みもあって、傷の有無や構築美といった点からすると、遥かにこちらが上です。また、フレーズやハーモニーのすごく細かいところまで考え抜かれているのも超一流指揮者の面目躍如といったところです。いろいろチャイ5を買ってみて「他にいいのないー?」って人には十分おすすめできます。

  因みに私はこのCDをeloquenceシリーズ(色んなレーベルのCDが、アンビエント・サラウンド・イメージングというマスタリングになっている一連のシリーズ)で買ったのですが、これはなかなか曲者です。ステレオで聞くにはまあいいんですが、ヘッドホンで聞くと音がほわほわな上に各音の分離がきつめです。このマスタリングは古い録音にはいいかもしれません。しかし、これくらい新しい演奏ならば変にこねくり回す必要はないように思います。廉価盤だから差別化してるのかもしれませんが・・・。