「暗黒の宝塚」を見る


 興味深い演劇があるという友の誘いを受けて、月蝕歌劇団の「邪宗門」を見てきました。月蝕歌劇団は創立から22年を経た劇団で、女性が多いことから暗黒の宝塚といわれるそうです。邪宗門の作者は、もはや伝説ともなっている寺山修司。普段演劇を見ない私がその伝説についてあっさり得心がいくほど面白かったです。

 最初からアバンギャルド全開で、冒頭から半分近くまでいったい何がどうなっているのか、全く分かりません。退廃的な雰囲気が全編にわたって支配していて、もうそれだけでもぞくぞくするのですが、最後の強引とも取れる持って行き方も最高でした。

 劇の雰囲気について、どこまでが作者によるものでどこからが演出(演出:高取英)なのかは演劇に不案内な私にはわかりませんでしたが、どちらにしても、統一された美学が素直にかっこいいと思えました。役者も、多少のばらつきはあるものの極端な大根はいなくて安心できました(特に主役の紫乃原実加はオーラ出てました)。

 この劇(劇団?)は、いわゆるアングラ演劇の系譜を引き継いでいると考えていいかと思います。王道の演劇やミュージカルもいいですが、こういったものも一度は見てみると何かが変わるかもしれません(残念ながら邪宗門の公演は終わってしまいましたが)。また見に行きたいと思えるパワー(アバンギャルドの持つあの「熱」とも言えるでしょうか)をもった劇でした。

追伸>
 会場だった阿佐ヶ谷はいい町だ。ザムザ阿佐ヶ谷(劇場)の場所が分からなくてコンビニの店員さんに聞いたら、実に高いテンションで教えてくれた(笑)。そのほかにもなんというか・・・町が有機性を感じさせる。住宅かショッピングモールかしかない、非人間的な沿線の住人からすると実に羨ましい。