英雄の生涯、ベト2/ヤンソンス&コンセルトヘボウ管


 オランダのアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団と同オケ主席指揮者として初来日のヤンソンスの組み合わせです。

 最初はベートーヴェン交響曲2番。ヤンソンスの明瞭な演奏と自然かつ大胆な抑揚が私は好きなのですが、それがベートーヴェンのシンプルな音によく合っていました。音の動きが手に取るように分かり、音楽にのめり込めます。明瞭でいて音が柔らかいのはこの名門オーケストラの特徴なのでしょうか(コンセルトヘボウなんてのを生で聴くのは初めてなのでよく分かりませんが)。明瞭系ベートーヴェンのジンマン/トーンハレ管より明瞭さも音色も1枚上でしょう。音の柔らかさとはっきりさのいいとこどりをしたような、素晴らしい響きでした。ヴァイオリンの両翼配置も作品にマッチしていると思います。(単に両翼が好きっていうのもあり)

 最初から最後までほぼ集中力も切らさず、アンサンブルも完璧です。音のバランスも実によく、安定感のある音でした。名人芸を見ているようです。名人なんですけど。名人達は始終ノリノリ(特にチェロ・ビオラ)で、楽しく本気でやっているように見えました。こういう視覚的なものも一流です。

 メインはリヒャルト・シュトラウス交響詩英雄の生涯」。休憩中からどんどん楽員が入ってきて軽くさらったりしてました。休憩時間半ばにはかなり舞台が埋まっており、この曲の大きさを演奏前から感じさせてくれます。

 大編成の曲でフォルテも要求されますが、実にクリアーです。見とおしがいい音です。迫力も十分。倍音が多いのか、最初のチェロも普通に6プル(12人)ながらホール全体に響き渡っていました。この曲は最初が盛り上がって途中はずっと静かで最後にちょっとだけ盛り上がって終わるので、私は不完全燃焼に終わってしまうことが結構あるのですが、途中の魅力にも結構気付けた気がします。ヴァイオリンソロは固かったですがテンポの流れ・自然かつ効果的な音の抑揚で十分メリハリがありました。舞台袖で吹くトランペットのバンダは2階席後ろ(扉のむこう)でした。これも実に面白かったです。

 数少ない難点を挙げるとすれば、1曲目の最高潮部に達する直前のホルン(highB-highC-high-D-highEs)が若干遅れたことでしょうか。座ってた位置(2階前右・ホルンは向かって左)のせいかもしれませんが。あと、Esバスのロングトーンがヘロヘロだったのも気になりました。前日飲みすぎたなあれは。

 全体的に、本当にすごいものを聴けました。オスロ管で発揮したトレーナー的能力を元々の能力が高いコンセルトヘボウでも出せれば、更にとんでもないオケになっていくような気がします。11月7日、サントリーホールにて。14000円(B席)。

追伸>アンコールは、ハイドンのセレナーデとR.シュトラウスの「ばらの騎士」から、というダブルアンコール。アンコールだけあってどちらも素晴らしいものでした。ハイドンは弦の実力を、ばらの騎士はホール全体に響き渡るフォルテを堪能できました。