ブラームス・交響曲第1番(ヴァント指揮/北ドイツ放送響/1983)

 今朝、2ヶ月ぶりくらいに、クラシックをまともに聴いた。
 そしてなぜか、初めてこの曲を聴いたときのことを思い出した。5年前の6月、大学オーケストラに初めて参加した演奏会本番である。
 私のいたオーケストラでは、1年生は最初の演奏会には参加せず、裏方を務める。本番中、同輩達はこぞってモニター室に集まり、先輩達の演奏に固唾を飲んでいた。私は、初めてのステージマネージメントですっかり神経がすり減っており、モニター室を離れてステージ裏のすみで一人ぼーっとモニターを見つめていた。そのとき際だって耳に入ってきたのが、4楽章のホルン・ソロだ。それまでまともにクラシックなど聴いたことのなかった私にとって、とにかく眩しく、興奮したのを覚えている。
 今日聴いた演奏は、そのときの感動を呼び覚ましてくれた。音楽から離れていた2ヶ月のブランクがそうせたのだと思う。

 「まずいワインなどない。ワインと出会うにふさわしい"時"があるだけ」(「ソムリエ」より)
 演奏に関しても、まったく同じことが言える。

 これまで、ブラームス1番に関してはベームの演奏が最も優れていると思っていたが、ヴァントも決して劣らない。
 確かにベームのような厳かな印象はなく、一見すると荒い演奏にもみえる。しかし、低音から高音まで「全てが」最高に響かせた音であり、どこを切っても瑞々しい。テンポ運びも、確信に従い前へ前へと出ていく。
 野武士のような豪放さと、懐の深さを両立させた素晴らしい演奏だと思う。今日は気分良く勉強できそうだ。

【参考:amazon】全集でも2200円。安い。