第九/イッセルシュテット指揮、ウィーンフィル(1965年録音)


ベートーヴェン:交響曲第9番

ベートーヴェン:交響曲第9番


 一聴して仰天、史上最高の第九ではないかと思います(少なくともバーンスタインと双璧)。私は、その録音の少なさ故、イッセルシュテットについてあまり知りませんでした。今となっては、これまで知らなかったことを心の底から後悔しています。本当に凄い指揮者です。この録音はウィーンフィルとのベートーヴェン全集(以下ベト全と呼ぶ)の中の1枚。ディスクユニオンでカビだらけのが300円だったので、買ってみた次第です。

 まず、全楽章を通して全く乱れが無いことに驚かされます。特に、2楽章に通底する例のリズム(”タン・タタン”)は、普通ズレる(ないしは微妙に揃わず輪郭がボケる)ものなのですが、このCDではズレがないのです。私の聞いた限りではありますが、こんなに揃っている演奏は他にありません。よほど指揮法に長けていたのでしょうか・・・?映像があれば是非見てみたいと思わせるほどです。また、音の新鮮さについても群を抜いていると思います。特に弦楽器は、一人一人が心の底から指揮者の音楽に共感しているような感じを受けます。「ひとつになる」というのはこういうことなのか・・・。良好な録音技術と相俟って、とても60年代の演奏とは思えません。

 また、乱れがない=アゴーギグ*1に欠ける、というのではもちろんありません。バーンスタインの演奏に比べれば確かに冷静な感じはしますが、そのクールさは寧ろ無駄な贅肉が無いように聞こえてくるから、不思議なものです。ただ、3楽章はちょっと早いので好みが分かれるかもしれません(私はもう少し遅いほうが好きです)。

 この指揮者の演奏を他にも聴いてみたい、と思わせる指揮者はなかなかいないものですが、この人は正にそれに当てはまります。ベト全はもちろん、これから他のCDも買っていこうっと。大推薦。(何と新品でも1000円!)

*1:テンポのユレ